島根県立古代出雲歴史博物館(出雲市大社町) 【連載#56】

出雲市大社町に2007年3月10日の開館を目前に控えた古代出雲歴史博物館。学芸員品川知彦さんに、その魅力とご自身の古代歴史観などについて聞いてみた。

古代出雲歴史博物館

(取材・文章 多々納 健一

品川知彦さん  「来館お待ちしております」 

【今回の元気企業】
島根県立古代出雲歴史博物館
学芸員:品川知彦(しながわ としひこ)さん
「来館お待ちしております」

2007年3月10日の開館を目前に控えた古代出雲歴史博物館。その中で開館準備に追われているのが学芸員のみなさん。開館まで半年をきり、益々忙しくなる作業の中、品川知彦さんにその魅力とご自身の古代歴史観などについて聞いてみた。

古代出雲歴史博物館

出雲大社勢溜から東へ約300m、開館へ向けて着々と準備が進む『島根県立古代出雲歴史博物館』が広がる。出雲大社境内で発見された3本に束ねた巨大柱(宇豆柱)、荒神谷遺跡の青銅器など、県内で発見された出土品などが多く展示される。

その名の通り、古代出雲の魅力がたっぷりと詰め込まれているこの博物館だが、全国的にも新しい試みもある。その代表的なものが、ゲーム端末機を用いた場内案内コンテンツだ。100台用意された端末には、展示物の詳細などが表示され、古代出雲への世界がより一層堪能できる。

準備作業に追われる専門学芸員の品川知彦さんはこう話す、
「例えば、出雲大社境内で発掘された三本柱。この柱が支えていた本殿がどのようなものであったか、というのは諸説ありますが、今回は5例を展示してみました。あとは来館される方に考えていただくことも面白いかなと」

開館までは多忙の毎日と話す品川さん。しかし、「自分の好きなフィールドで働いているわけですから。楽しいですよ」と嬉しそうに答えてくれる。さぞや以前からの“出雲オタク”?とたずねると。「まさかここに住むことになるとは思いませんでした」と意外な答えだった。

最初で最後の?山陰路

開館に向け急ピッチで工事が行われている島根県立古代出雲歴史博物館

開館に向け急ピッチで工事が行われている島根県立古代出雲歴史博物館

 「山陰へは学生の最後の時に一度訪問しただけです。正直、再び来ることはないと思っていました。まして住むなんて(笑)」と話す品川さん。出身は山口県の宇部市。大学時代は宗教学を専攻していた。大学卒業間近、実家に帰る途中に一週間程かけて山陰各地を訪ねたと言う。

 「当時の自分の研究テーマとは違う分野でしたが、一度は行ってみたいと思っていました。ヒッチハイクしながら巡り歩いたのですが、乗せてくれたドライバーの方が「帰りも乗るかね?」なんて言ってくれて、「いい所だなぁ」という印象はありましたね」
 その当時は就職先も決まっていたので「たった一度の山陰」のつもりだったという。

 そんな品川さんがなぜ島根に?それは、会社員時代のあるエピソードからだった。
当時、東京の会社で営業企画などの仕事をしていた品川さん。ある時、古本を購入するため上京してきた恩師と久しぶりに会う機会に恵まれる。大学時代の話で盛り上がったその日はそれで終わったのだが、恩師が仙台に帰った直後、再び連絡があったのだ。

 「こんなのあるけど受けてみるか?」
 それは島根県が募集していた古代文化センターの職員募集の知らせだった。会社員として充実した日々を送っていた品川さん。迷いはしたが、決断した。

 「やっぱり、自分の好きな分野で働けるというのは幸せなことだと思います。出雲は日本の古代史を研究する人にとって、必ず通るところ。その分野の真っ只中で働けるというのは、何物にも変えがたいのではないでしょうか」
 “出雲の神様”からもたらされた(?)“ご縁”がきっかけで学芸員となった品川さん。さらに不思議な“ご縁”だったのが、「恩師もこっち(島根県内)で働くことになったのですよ。後で知ったことですけどね」
 
 その後、既に動き出していた『島根県立古代出雲歴史博物館』の基本構想作りへ加わることとなる。

古代ロマンを語る交流の場として

平面を意識した造りの建物構造

平面を意識した造りの建物構造

 「何を展示するか」、「どう魅せるか」など、いわゆるソフトの面を中心に動き出したという古代出雲歴史博物館。
 「なるべくフラットで、館内でも動きやすい導線を意識しました」と、品川さん。学芸員さんたちの知恵が建物の形へと反映されたのかもしれない。

 開館前ではあるが、地元の希望者を順次「ワークショップ」という形で事前に招待し、“歴博”についての認識を植えつけることも重要な仕事の一つである。

 「県外の方に来ていただくことはもちろんですが、県内の方にも来ていただきたいと思っています。そういう意味では、地元の歴史についても、あらためて知っていただこうと思っています。一畑電車の資料は、そういう意味もあります。

 とかく博物館などは“見る”ということを目的とされますが、“調べる”や“体感する”といった目的でも来館していただきたいと思っています。古代出雲を語り合う交流サロン的な場なるよう、私達も努力していきます。
ご来館お待ちしております」

島根県立古代出雲歴史博物館の案内

ゲーム端末で資料案内

ゲーム端末で資料案内
100台用意された端末には、展示物の詳細などが表示され、古代出雲への世界がより一層堪能できる

島根県立古代出雲歴史博物館
出雲市大社町杵築東99-4

  • 平成19年3月10日開館
  • 開館時間:午前9時から午後6時
  • 休館日:毎月第3火曜日
  • 常設展観覧料:一般600円  大学生400円  小中高生200円

 

  • 開館記念特別展
    平成3月10日(土)~5月20日(日)
    『神々の至宝?祈りのこころと美のかたち---』
    宗像大社、熊野速玉大社、春日大社、八坂神社、伊勢神宮、出雲大社などから特別に借り受けた約1,100点の「神宝」、「装束」などが一堂に会する。

    特別展、常設展セット券:
    一般1,300円(前売り1,000円) 大学生700円(前売り550円) 児童等400円(300円)
    ※前売り券は各プレイガイド等で販売中
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