高専プロコンで敢闘賞を受賞した松江高専情報工学科の皆さん(松江市)【#連載66】

プロコンに参加した松江工業高等専門学校情報工学科キモチカルテチーム(梶野大輔・青戸渉・大西祥生・坂本夏紀・仲麻有香・須山希さん)の奮闘記。

高等専門学校プログラミングコンテスト(通称:プロコン)

(取材・文章 浅野 智之)

プロコンに参加した松江工業高等専門学校情報工学科キモチカルテチーム(写真向かって左から)(後列)梶野大輔・青戸渉・大西祥生・(前列)坂本夏紀・仲麻有香・須山希さん 

【今回の元気人】
プロコンに参加した
松江工業高等専門学校情報工学科
キモチカルテチーム
(向かって左から)(後列)梶野大輔・青戸渉・大西祥生・(前列)坂本夏紀・仲麻有香・須山希さん

全国高等専門学校プログラミングコンテスト(通称:プロコン)ってご存じですか?
プロコンとは、情報系の全国の高専生が集まり、コンピュータソフトウェアのアイデアを競うコンテストです。

プロコンには「自由部門」「課題部門」「競技部門」の3つの部門があります。
「自由部門」は、プロコン参加者がそれぞれ独自に考えた自由なプログラムを作り、アイデアの独創性や実用性などを競います。
「課題部門」は、与えられたテーマ(今年は「子供心とコンピュータ」)に沿ったプログラムを作り、アイデアの独創性などを競います。
「競技部門」は、与えられた問題を速く正確に解くことを競います。
今年のプロコンは10月7日、8日の2日間に渡って、茨城高専で開催されました。

大西さんたちは、病院に設置したコンピュータ画面に、痛いところや今日の気分などを表すシンボルマークを表示させ、それを子供が選択することで子供自身が医師へ症状を伝えることができるシステム「キモチカルテ」を課題部門へ出品し敢闘賞を受賞しました。

そこで、課題部門へ出場した「キモチカルテ」チームを代表して大西さんと坂本さんにお話を伺いました。

子供心とコンピュータ

キモチカルテの子供用画面。画面に出てくるシンボルマークをタッチパネルを使って選択することで自分の症状を入力する。絵本と対話しているかのようなイメージを目指す。

(写真2)キモチカルテの子供用画面。
画面に出てくるシンボルマークをタッチパネルを使って選択することで自分の症状を入力する。
絵本と対話しているかのようなイメージを目指す。

まずプロコンに挑戦したいと言い出したのは坂本さん。普段から仲のいい仲麻さんを誘って、課題部門の「子供心とコンピュータ」というテーマでは、いったい何を求められているのかを考えます。そして2人は、コンピュータを使うことで自分達が小さかったころ困っていたことを解消しよう!と考えつきました。

「小さかったころ困ったのは、病院で自分の症状を医師へうまく伝えられないもどかしさだった」と坂本さん。身近にいる看護士さんたちに現状を聞くと、子供が診察時に泣いてしまい、それをあやすことから始めなければならないので大変だ、という現状を知りました。

そこで2人は「絵本とお話ししているように」症状を医師へ伝えられれば、リラックスして受診できるのでは、と考えました。

校内予選

プレゼンテーション審査の様子。写真中央で発表しているのが坂本さん。

(写真3)プレゼンテーション審査の様子。
写真中央で発表しているのが坂本さん。

プロコン全国大会へ出場するためには、5月の校内予選と7月の全国予選を勝ち抜かなければなりません。

まずは校内予選。ここでは、学生がアイデアのプレゼンテーションを行います。これを松江高専の先生方が審査し、全国予選へ進む「自由」「課題」各2チームと「競技」1チームを選抜するのです。校内予選へ向けては、アイデアを説明するパンフレットなどの資料作りが必要です。そこで2人は、資料作りの得意な須山さんをメンバーに誘いました。

校内予選の結果、キモチカルテは堂々の1位通過。子供が困っていることを解消し、成長の手助けにもなる、本当の「子供心」を考えた有用なシステムだったからです。

校内予選を勝ち抜くと、書類審査で行われる全国予選へ向けて準備をします。また、1チーム5名までエントリーできるので、プログラム開発の得意な大西さんと梶野さんをメンバーに誘います。新たなメンバーを加えて再びアイデアを話し合い、どういうシステムにするのか、もっと細かいところまで検討していきます。

全国大会へ

7月、全国予選を通過したという連絡が来ました。
そして、夏休みを使って全国大会へ向けたものづくりが始まりました。
大西さんがリーダとなり、チームの役割分担をします。

坂本さん・仲麻さん・須山さんが、病院や専門家への調査や、システムを紹介するパンフレット作成、操作マニュアル準備、プレゼンテーション準備を、大西さんと梶野さんがプログラムの開発をという役割分担になりました。ここで大西さんは、2人でのプログラム開発は心細いので、部活の後輩の青戸さんにも協力をお願いしました。

坂本さんたちは、現場の意見を取り入れてアイデアを改善し、システムの有用性の裏付けを得るため、多くの医者や発達心理学の先生へ、聞き取り調査やモニター調査の協力をお願いしました。
この段階で、シンボルマークを選ぶことが子供の意思伝達を補助できる、という専門家からの裏付けも得られました。

こういった調査と平行して、大西さんたちはプログラム開発を進めていきました。

度重なるトラブル

自ら率先して来場者へ宣伝をする青戸さん。プロコンでこんなことをする人は初めて!

(写真4)自ら率先して来場者へ宣伝をする青戸さん。
プロコンでこんなことをする人は初めて!

夏休み前半、1人で毎日のように学校へ来て準備している坂本さんを尻目に、他のメンバーは週2日だけしかプロコンの準備にやってきません。

このころを振り返って坂本さんはこう言います「思ったように作業が進まなくてイライラした。毎日のようにみんなにメールを送ったけど、みんなやる気がない様子で反応がいまいちだった。」
しかし夏休みも残り2週間になると、それぞれが焦りはじめます。このころからみんなで毎日学校へ集まり、プログラムを作ったり、説明用の資料を作ったりしました。

夏休みは終わり、学校が始まりました。プロコンまであと1週間!しかし、夏休み中にはプログラムが目標の6割程度しかできていません。大西さんたち開発チームは、毎日遅くまで学校に残ってプログラムを作り、また、坂本さんたちも資料をまとめるなど準備に追われていました。
なんとか終わりが見えてきたころ……
連日の無理がたたったのか、マニュアルを作っていた須山さんが体調を崩してしまったのです!
まだマニュアルは完成していません。そんなトラブルにもめげず大西さんがうまく仕事を割り振って、プログラム担当だった青戸さんが仕事を引き継ぎ、出発の朝にようやく完成しました!

いよいよ茨城へ出発です。
しかし……
順調に東京へ着き、茨城へ行くぞ!というとき、大雨の影響で電車が1時間も遅れていたのです。さらに、やっとやってきた電車はすぐに強風の影響で停止!なんとか茨城のホテルへたどりついた頃には、松江を出発してから、なんと6時間も経っていました。
数々のトラブルを乗り越えて、いよいよプロコン全国大会が始まります。

プロコン全国大会スタート!

デモンストレーション審査の様子。写真中央で審査員へ説明しているのが大西さん。写真向かって右の説明用パネルももちろん手作り!

(写真5)デモンストレーション審査の様子。
写真中央で審査員へ説明しているのが大西さん。
写真向かって右の説明用パネルももちろん手作り!

全国大会は、考えてきたアイデアを評価するプレゼンテーション審査、アイデアを実現できているかを評価するデモンストレーション審査、マニュアルの通りにシステムが動くかどうかを確認するマニュアル審査があります。また、これと平行して、来場者へのデモンストレーションもあります。

まず初日はプレゼンテーション審査です(写真3)。キモチカルテは坂本さんが20チーム中2番目に発表します。発表は練習通り順調に終わり、審査委員の質問にもうまく答えることができました。感触はとてもよかったようです。
会場では、なるべく多くの方に見て欲しいという思いから、青戸さんが率先して来場者を呼び込みました(写真4)。
デモンストレーションを見に来た来場者の方からも、「おもしろいね!」という意見をもらい、みんなとてもうれしそうでした。
次の日はデモンストレーション審査です(写真5)。
大西さんが審査委員にシステムを動かしながら説明します。審査委員から「人にやさしいシステムですね」という意見をもらうなど、とても好評でした。 みんな、優勝できると信じてその日の結果発表に臨みました。

波乱の結果発表

審査結果は、審査委員特別賞(3位相当)から発表です。この賞には4チームが選ばれます。1つ、2つと発表されていき、みんな緊張した面持ちでアナウンスを聞いています……
「キモチカルテ」の名前は呼ばれませんでした。

次に優秀賞の発表です。
……
ここでも、「キモチカルテ」の名前は呼ばれません。残すは最優秀賞の発表のみ。優勝への期待が高まります。

ついに最優秀賞の発表です。みんな優勝を信じ、その一言を待ちました。
……
しかし、「キモチカルテ」の名前は呼ばれなかったのです。
みんながっくりと肩を落とします。あんなに自信を持っていたのに、優勝できなかったなんて!思わず会場で泣いてしまう場面もありました。

プロコンを経験して

初めてチームのリーダを経験した大西さんはこう言います。
「仕事の割り振りや作業量の見積もりがうまくできなかったので後悔している。リーダって大変だなと実感した。」
坂本さんは、「福祉系の仕事を目指す気持ちが強くなった。そして、人脈が広がった。」と言います。

プロコンでの優勝は逃しましたが、みんなこの程度であきらめてはいないようです。
「もっとキモチカルテを多くの人に知ってもらいたい!」
「プロコンでリベンジしたい!」
他のコンテスト等へも応募しています。

この調子で、多くの人に「キモチカルテ」を紹介して、その有用性が理解されれば、本当に病院で使われる日も遠くないはず!
「これは私達の作品です!」と胸を張って自慢できるもの、本当に世の中の役に立つもの。
そんなものを、今回の経験を生かしてたくさん作っていって欲しいものです。
(了)

追記 第5回キャンパスベンチャーグランプリ中国で準グランプリ受賞!!

キモチカルテチームは、その後、第5回キャンパスベンチャーグランプリ中国(2006年)に 出展、見事、準グランプリ中国経済連合会会長賞を受賞されました。(キャンパスベンチャーグランプリのサイト

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