自転車専門店 タクワサイクル 多久和富義さん(島根県松江市)【#連載76】

「気分爽快!」自転車で走る山陰の道。ロードタイプ自転車専門店タクワサイクル 多久和富義さん

(取材・文章 多々納 健一)

ロードタイプ自転車専門店タクワサイクル 多久和富義さん  

【今回の元気人】
多久和富義さん
ロードタイプ自転車専門店
タクワサイクル店主 
〒690-0855 島根県松江市浜佐田町918-5
TEL:0852-36-7775
FAX:0852-36-8920
メール bhhmt110@ybb.ne.jp
タクワサイクルHP
http://www.takuwacycle.com/

真夏の江の川沿い、少し派手目の自転車集団が川面からの風を切って、気持ち良く走っていた。その一行は広島県の三次市を出発し、三江線沿線の道を通り江津市へ向かうのだという。

彼らは島根県松江市の『タクワサイクル』のお客さんで、ツアーを主催したのがお店の主人である多久和富義さんだ。

「島根の自然の中を自転車で走ると気持ちいいですよ。身体だけでなくストレスなんかも一気に吹っ飛びます」と話す多久和さん。

自転車に込める想いと元気の源を聞いてみた。

 

 ロードタイプ自転車専門店として

 松江市西浜佐陀の国道431号線沿線、に店舗を構える『タクワサイクル』はこの地に移ってからおよそ5年。ロードタイプの自転車専門だ。

 自転車屋さんは島根県内にも数々あるが、ロードタイプに特化したお店は珍しい。そんなタクワサイクルさんも、つい10数年前までは原付や学生用や主婦向け自転車、いわゆるママチャリを扱う“普通”の自転車屋さんだった。

 「ある時、お客さんからの要望で、当時流行り出していたマウンテンバイクを取り寄せた時でした。最初は「面白いのかなぁ」と疑問でしたが、自分も試してみたらハマっちゃいましたね。今思うと現在の形になったきっかけはその時でした。その時断っていたら今の姿はないですね」と多久和さん。

 その後、マウンテンバイクの流行は下火になるものの、安定した人気のロードタイプへの要望が増えてきたことから、現在の形態になった。

広告掲載が思わぬ効果

(写真)タクワサイクルの店舗

(写真)タクワサイクルの店舗

 マウンテンバイクを専門的に取り扱い始めた当初、販路拡大を狙って専門誌への広告を出したこともあった。
「結果はまあまあでしたね。ちょっと調子にのったかな?とも思ったのですが、思わぬ反応がありました」
その雑誌を見たマウンテンバイクの本場であるアメリカのメーカーが日本法人を通じて販売取扱のオファーをしてきたのだという。

 ロードタイプ専門になってからも同じ動きはあり、中には県内では多久和さんのお店でしか取り寄せできないメーカーもあるとのこと。小売店がメーカーから直接的な後押しを受けることは、そのお店にとっても大きな追い風となる。

理想は自転車先進国のヨーロッパ

(写真上)多久和さんの愛車はツールドフランス参加チーム「ケスデパーニュ」のレプリカでピナレロ社製125万円(完成品)の名車。フレームや部品のほとんどがカーボンファイバー製で、総重量7.5kgは片手で持ち上げられる。(写真下)

(写真上)多久和さんの愛車はツールドフランス参加チーム「ケスデパーニュ」のレプリカでピナレロ社製125万円(完成品)の名車。フレームや部品のほとんどがカーボンファイバー製で、総重量7.5kgは片手で持ち上げられる。(写真下)

 自転車の本場はなんといってもヨーロッパ。フランスのツール・ド・フランスは世界的にも有名だ。また、イタリアには自転車専門の工房が数百存在する。
「それには下地。小学生の頃から専門のロードレース学校があるくらいですからね」と多久和さん。競技人口ならぬ自転車人口の数が違うのだ。

 「数だけじゃなく、道路等のインフラに対する考え方も違う。あっち(欧米)では自転車専用道路の整備や公共交通機関への持ち込みも当たり前のようにあります。日本はまだまだですね」と話しながらも、ご自身では新たな提案も。
「線路の枕木のような木を宍道湖岸に敷き詰め、自転車・歩行者専用道路をつくってみたいですね」

 この提案は、昨年(2006年)行われた「斐伊川流域の水辺を考える懇親会」の意見交換会でも発表。多くの共感を得たとういう。一見、無謀な提案のように感じるが、過去には一畑電車へ「自転車を電車に持ち込めないか」と直接交渉したこともある。それが今では「レール&サイクル」という形で実現したこともあり、「それぞれの機関がやる気になればやれるはず」と訴える。

多久和さん、世界を走る

(写真)江の川沿いを走るツアー。参加者も大自然の中を気持ち良く走りご機嫌。

(写真)江の川沿いを走るツアー。参加者も大自然の中を気持ち良く走りご機嫌。

 現在、国土交通省を中心として、生活の中に自転車を活用するよう様々な企画や啓発を行っている。宍道湖北岸はその自転車専用道路のモデル地域として指定されており、現在では全国的に見ても人気のルートである。今でも更に整備がされており、多久和さんの理想にも近づいている。

 更に地球温暖化対策の一環としても自転車の使用を提唱しており、二酸化炭素の排出量も様々な通勤手段よりもダントツに少ないデータも出ている。そして、多久和さんが自転車を進める最も大きな理由は、“健康”。

 「自転車に乗れば無理無く運動もできる。メタボリックも関係なくなるでしょうね。苦しい思いをしてダイエットするよりも楽しく気持ち良く運動をする手段としてはこの上ないでしょう」と話す多久和さん。ご本人が何よりの証拠である。昭和20年生まれ、還暦を過ぎながらも、機会があれば自転車で駆け回る。

 

提案中の敷板式湖岸道。「『青の洞門』のごとく、毎日コツコツやっていけば、やってやれないことは無い」と多久和さん。(写真は多久和さん自身が参考例として仮設置したものです)

提案中の敷板式湖岸道。「『青の洞門』のごとく、毎日コツコツやっていけば、やってやれないことは無い」と多久和さん。(写真は多久和さん自身が参考例として仮設置したものです)

 来年には念願のハワイでの160キロ走る自転車イベントに参加するなど、勢いは止まらない。地元の自転車道整備を願うと同時に本人も「将来はイタリアでも走りたい」と意欲満々マン。実際に自転車メーカーのピナレロの工場見学と160キロを走るツアーへの参加を予定している。今後の多久和さんの“走り”から目が離せない。

タクワサイクルへの案内
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ロードタイプ自転車専門店
タクワサイクル 
〒690-0855 島根県松江市浜佐田町918-5
TEL:0852-36-7775
FAX:0852-36-8920

平成19年10月22日取材