NPO法人松江ツーリズム研究会(島根県松江市))【#連載75】

松江の観光を支える、NPO法人松江ツーリズム研究会の副館長 高橋 保さんにお話をうかがいました。

(取材・文章 tm-21.com)

松江城山二の丸下の段にある「ぶっらと松江 観光案内所」
 

【今回の元気企業】
松江ツーリズム研究会
代表者 山本 素久さん
スタッフ 30名
〒690-0887
島根県松江市殿町428 松江城山二の丸下の段
(ぶらっと松江 観光案内所)
TEL.0852-23-5470
FAX.0852-23-5490
URL: http://www.matsue-tourism.or.jp/

松江ツーリズム研究会

小泉八雲が愛してやまず、怪談の舞台となり影響を与えた街・松江。
宍道湖に、夕日に、松江城などの美しい風景があふれる街・松江。
実は、文豪達の隠れた癒しの場であった街・松江。

そんな街、“松江”に惹かれた多くの人々が、年間を通して訪れてくる。

観光都市・松江の顔となっているのが、 松江ツーリズム研究会

松江ツーリズム研究会は約30名で構成されており、平成17年の設立後、松江城、小泉八雲記念館などの指定管理
業務を務める一方、ツーリズムの企画立案、観光ガイド支援などを行っている。いわば、観光産業が占める割合の高
い松江市にとっては、無くてはならない存在。

平たく言えば松江城、武家屋敷などでチケットを販売したり、周辺の見所情報やおすすめのお土産などを紹介し
たり。
松江に観光で訪れた人が必ず出会うといってもよい、 “松江の顔”。
そして、それら管理する施設の清掃、設備の修繕、保守管理を行う“松江の観光を支えるバイプレイヤー”の面も
併せ持つ。

その中でも、松江城山二の丸下の段にある「ぶらっと松江 観光案内所」
年中無休のこの案内所では、多くの旅行者の相談を解決し、手荷物預かりの無料サービスなどが行われている。
きめこまかい対応とサービス。地元内外からの評判は高い。

遊覧船『はくちょう号』に乗って、シジミ漁を間近で見学したり、松江の街並みを散策する、“ 宍道湖エコクルーズ&水の都まち歩き ”ツアーについて、

「実際に目で見て感じてもらいたいのです。ゆったりとした時間を過ごす中で松江の魅力を感じていただきたい。」

そう言葉を探しながら、ゆったりと話す高橋さん。
この言葉も、話す高橋さんの姿も、小泉八雲が愛した松江の人々の優しさを表しているようである。

もともと観光業に携わっていた方達かと思ったら、

「私はたまたま関わっていましたが、全員が全員というわけではないのですよ。」

意外な答えが返ってきた。いや、もしかしてこれが今話題になっている「松江ゴーストツアー」の人気の秘密かもしれない。

松江ゴーストツアー

松江ゴーストツアーの発案者:小泉 凡(こいずみ ぼん)さん。小泉八雲の曾孫、島根県立短期大学部准教授、小泉八雲記念館顧問。

松江ゴーストツアーの発案者:小泉 凡(こいずみ ぼん)さん。
小泉八雲の曾孫、島根県立短期大学部准教授、小泉八雲記念館顧問。

世の中に旅行ツアーは数え切れないほどありますが、夜に暗いお寺や古井戸を回るツアーは、日本では珍しいとのこと。

思い浮かぶのは、イギリスのゴーストツアーですが・・・
「実は、小泉八雲の曾孫、小泉 凡さんの発案なのです。」

目指せっ、アイルランド・ダブリンのゴーストバスツアー。

このゴーストバスツアー、予約しないと参加できない大人気のツアーなんです。
ゴーストのペインティングが施された年代物のバスに揺られながら、“呪われた屋敷や墓地、「吸血鬼ドラキュラ」の著者ブラム・ストーカーの書斎など
ミステリースポットを巡る”というもの。

本題に戻りまして。

八雲とアイルランド、この取り合わせしっくりくるのですが、ゴーストツアーってやっぱり怖くないですか。
怪談や松江の七不思議の舞台を夜歩くのですよね。

すると高橋さん、かぶりを振って、

「これは怖がらせるための企画ではないのです。怪談は確かに怖いものですが、読んだ後に心に残るものがありま
せんか。」

確かにあります。 怖いというよりは畏れ、見えないものへの畏敬の念でしょうか。

すると少し寂しそうに

「この時代、明かりが多すぎて、何というか光に埋もれている感じではないですか。そうすると五感がおかしくな
って、人間本来のリズムがずれているのではと思うのです。このツアーで“闇”に触れてもらうことで、本来のリ
ズムを取り戻していただけたら。」

目に見えるものが全てで、目に見えないものを振り返る余裕を私たちは忘れているのかもしれません。

実はこのツアー、結構歩くのです。
筆者は地元民のため、「あの距離をただ歩くのは・・・」と、思ってしまいました。

「ご覧になりますか」と、見せていただいたのはツアーの行程表。
このツアー、メインポイントは4カ所ですが、それらのポイント地点に行くまでに、幾つかの八雲ゆかりの場所も
通るのです。

その中の一カ所である城山稲荷神社を指して、

「ここは八雲が大好きだった場所ですよ。」 知りませんでした、思いっきり素通りしていました・・・。

懐かしいものを思い出すように
「そう聞くと違うものに思えませんか。そんな話を聞くと思い出に残りやすいし、普段いかに私たちが、見落としているかということです。」 

「八雲と同じ風景を見ているのですよ。」
高橋さんは、にこやかに言われました。

実際に参加された方からも
「今まで知らなかったことを、たくさん学べるツアーだった」、「想像していた以上に充実していた」
という声が寄せられているそうです。

高橋さんの思いは、参加された方々に伝わっているようです。

「松江ゴーストツアー」は現在のところ来年の3月まで予定されています。
大好評につき、お早めのご予約をお勧めいたします。

本物であるために

小泉八雲が描いたゴーストの図

小泉八雲が描いたゴーストの図

このツアー、県外はもちろん、島根県内からも多く参加されているそうです。
「参加された方達はもちろん、地元の方に認められて初めて本物になると思います。地元からの情報発信、参加された方達の口コミによってより信頼性が高くなると思うのです。」

「確かに目を引く派手さはありません。しかし、長く続き、愛されることに意味があると思うのです。」

見せていただいた棚には、懐中電灯や音響機材に提灯などの小道具が所狭しと並べてあり、横にはパイプいすまで
ありました。

「これら全部ゴーストツアーに使うものです。確かに懐中電灯を持って歩けば、それだけで雰囲気がでます。これらの小道具を使うことでさらに怪談の世界に近づくことができるのです。」

「パイプいすは、座って話を聞いていただけるようにポイント地点に持って行くものです。ご高齢の方でも最後のポイント地点まで楽しんでもらっています。安心して楽しんで過ごしていただくためです。」

これが松江の観光を支える、松江ツーリズム研究会の真髄でしょうか。

正直、利益はでませんよね・・・

「私たちの活動を注目していただくことで、多くの方に松江を訪れていただき、この地域の経済を盛り上げていく役割を担えたら素晴らしいですね。それに利潤を追求しすぎたら、きめこまかいサービスは提供出来なくなると思います。」

実際、宿泊施設など関連業界からの期待は高いそうです。

もてなしの心

松江ゴーストツアーの様子。下の写真:月照寺大亀の前で

松江ゴーストツアーの様子。
下の写真:月照寺大亀の前で

回収されたお客様アンケートには、「また松江を訪れたい」、「新しいツアーが出来たら参加したい」との声が多いそうです。

「松江が愛されるのは、素朴さが残っているところでしょうね。とかく新しいものが注目されがちですが、昔からあるものをもう一度見直してもらうことで、新たに発見できるものもあります。そして発見したものを、また確かめに来ていただけたら素敵ですね。」
また訪れたくなる、それも松江の魅力の1つですよね。

はにかみながら笑って言われました。

「多くの方に松江の良さを知ってもらい、日本に限らず海外からもより多くの旅行者の方が来ていただくのが目標でしょうか。松江の誇る文化や歴史のさらなる魅力を見せる新たなツアーも計画したいですね。奥ゆかしいといわれる松江人だって、挑戦しますよ。」

文豪・志賀直哉が松江について、「最後には人との交渉が残る街」と書いていました。
肩肘を張って“もてなす”のではなく、自然体で迎えてくれる雰囲気と人々がここにはあるのかもしれません。

「奉仕が私のツーリズムです。」
誇らしげに、そして嬉しそうにおっしゃる姿に、八雲が愛した松江の人々の心が見えたような気がしました。

少し疲れて、立ち止まりたくなったら、ぜひ松江にお越しください。
昔からある風景に欲しかったものが、見つかるかもしれません。

そして、ぜひ松江ツーリズム研究会に足を運んでみてください。
変わらない人々の思いやりに触れることが出来るかもしれません。

思いもかけない思い出が、きっとアルバムに加わるはずです。

今回掲載の元気企業データ

 
月照寺の大亀~夜になると人食いに出かけたといわれる伝説が~

月照寺の大亀碑
~夜になると人食いに出かけたといわれる伝説が~

法人名 NPO法人 松江ツーリズム研究会
所在地 島根県松江市殿町428
代表 山本 素久
設立 2005(平成17)年10月20日
業務 ツーリズムの企画立案と実施
観光ガイド支援、観光情報発信
観光動向・各種調査 
連絡 TEL 0852-23-5470  FAX 0852-23-5490
ホームページ 松江ツーリズム研究会ホームページ

 

 

2008年11月21日取材