島根県サッカー協会 専属コーチ 小川 秀樹さん【#連載87】
ドイツサッカー連盟公認 A級ライセンス(UEFA A級ライセンス)
今回、取材にご協力いただいた、小川秀樹さんは、ドイツサッカー連盟公認のA級ライセンス(UEFA A級ライセンス)の所持者です。
何のライセンスかというと指導者のライセンスです。サッカーに明るい人ならご存知かと思いますが、ドイツは「日本サッカーの父」と言われるデットマール・クラマー氏の母国であり、大変縁が深い国です。
世界的に見ても、ワールドカップ優勝3回を誇るサッカー大国であり、現在も多くのスター選手を輩出しています。
そのドイツ公認のA級ライセンスを持っているというだけで、サッカー経験者のみならず、一度はお話を聞いてみたいと思うもの。
どのような経緯でドイツ公認のライセンスを取得、(社)島根県サッカー協会の専属コーチになったのか、現在の活動も含めてワクワクしながら聞いてみました。
女性フットサルスクールの練習風景
指導者への道
話を聞き始めてすぐに驚きの事実を聞かされた!何と、小川さんの所属していた中学校にはサッカー部がなかった!地元の子供たちを集めたクラブチームで月に1回程度の練習をしていただけだった。さらに驚くことに、初めから指導者をめざして、中学卒業後にドイツへの留学をすることを決めたと言う!!
中学卒業後にプロ選手を目指して海外留学をする話は聞いたことあるが、初めから指導者を目指して留学する人はあまり聞いたことがない…。なぜ初めから指導者を目指したのか?
普通の人なら思うであろう疑問を聞いてみた。
「中学でちゃんとした指導を受けていないので、プロ選手としては厳しいと思って…
それなら、初めから指導者を目指したい。指導者なら、選手と違って、生涯現役でサッカーに関わっていけると考えたのです。」とても中学生とは思えない、将来を見据えた明確なビジョンと、自分は生涯サッカーで飯を食べていくと言う、強い気持ちに驚かされた。
そして中学生の頃に、サッカー雑誌にドイツのコーチ育成の記事を目にした。当時、指導者育成のシステムがあり、公式のライセンスを発行していのがドイツだった。これしかないと思い、高校には行かずに留学を決意した。
しかし、当然両親は猛反対。さらに中学校の先生方も大反対。校長室に呼び出され、「せめて高校くらいは出た方がいい」と何度も説得された。それでもあきらめなかったある日、父と一緒に校長室へ呼び出された。そこで、それまで決して賛成してくれなかった父が、「息子には好きなことをさせてやりたい」と言ってくれた。びっくりしたのと同時に、すごくうれしくて今でも印象に残っていると、当時のことをふりかえる。
あとで聞いた話だが、父はそれまで何度か先生に呼び出されていたようで、何とか息子さん(小川さん)を高校に行くようにと説得するように、言われていた。それでも最終的に、許してくれ、応援をしてくれた両親に今でも大変感謝をしていると、うれしそうに話しをしてくれた。
そして、さまざまな問題を乗り越え、準備をして、中学卒業から一年立ちそうな94年の1月に晴れてドイツに旅立つことになった。16歳の冬のことだった。
松江市営陸上競技場補助競技場
サッカー場 : 1面
日本サッカー協会公認人工芝
83m × 110m
(うちサッカーピッチ 68m × 105m)
ドイツでの生活、そして指導者へ
「最初は、指導者を目指して本場のサッカーを勉強しにドイツに来たのですが、本場のサッカーを目にすると欲が出てきて、選手としてもプロを目指してみたいと思うようなりました。将来的に、選手の経験も指導者になったときに生きてくるとも思ったのです。」
そして、ホームステイ先のご主人の協力もあって、何とドイツの名門バイエルン・ミュンヘンのユースのセレクションを受けることに!そして、結果は見事に合格!プロの卵たちの仲間入りをした。それからは、午前中はドイツ語を学ぶために語学学校へ通い、午後からユースの練習に参加。
ホームステイ先がバイエルンの郊外にあり通学に1時間くらいかかるため、朝は6時に起きて、練習が終わって帰ってくるのは10時を過ぎていた。
言葉が通じない。習慣も違う。そんな慣れない環境での生活が、大変なものだと言うことは容易に想像ができると思う。しかし、その中でも特にサッカーレベルの違いには、相当なショックを受けた。
プロ選手の派手でカッコいいプレーとは裏腹に、地味で、しんどい練習が繰り返され、練習は基本中心で一つ一つのプレーの正確さを求められた。パス一つにしても、強さ、スピード、正確さすべてのレベルが高かった。
結局、色々な事情もあり、残念ながら選手としての道は断念したが、そのときの経験した、一流レベルでの練習は今でも指導に確実に生きている。
せっかくなのでサッカー以外にもドイツでのエピソードを訪ねてみた。
「ホームステイ先のご主人のご厚意で、休みになるとキャンピングカーに乗ってあちこちに連れて行ってもらいました。ヨーロッパは陸続きなのでギリシャや、イタリアにも連れてってもらいました。その人には、せっかく海外まで来ているのだから、日本では体験できないことを体験しなさい。サッカー以外のことも勉強しなさい。とよく言われました。当時はその意味がわからず、サッカーだけしたいのに…。と言う思いもあったのですが、今思うと、当時経験したことが、色々なものの考え方や、見方など、人間としての幅を広げることにつながったと思います。今では、いろいろなことを体験させてもらったことに大変感謝しています。」
ホームステイ先のご家族にも恵まれて、ドイツ語は生活するのに困らないレベルになった。
サッカーに関しても技術的なことはもちろん、精神的(メンタル)な部分もたくさん学べた。
選手としての挫折はあったものの、実りの多い留学期間だった。
写真は女性のフットサルリーグの試合風景と練習風景です。
島根県サッカー協会の専属指導者へ
一年の留学期間を終了後は、念願の指導者の道を歩み始めた。
短期ではあるが、指導者の仕事と、ドイツへの留学資金をためるためにアルバイトの生活を送る日々。
滞在資金がたまると、ドイツに指導者育成の勉強をしに行き。また、帰ってくると指導をしながら、バイトをして資金をためる…。
ドイツのB級ライセンスを取得した時に、多くの方にご支援をいただき、(社)島根県サッカー協会の専属指導員として就職することが叶った。県サッカー協会職員として、JFA公認B級ライセンスを取得。そして一つの目標である、ドイツのA級ライセンスを取得したのは昨年の9月のことだった。ドイツ滞在中、業務支援をいただいた多くの方の理解に大変感謝している。
現在は、平日はフットサルコートを使用して、サッカースクールなどを開催している。子供の指導はもちろん、最近では女性の要望もあり、女性限定のサッカースクールも毎週行っている。
週末になると、各年代の選抜チームのコーチ、サッカー関係のイベントのお手伝いや、コーチの技術講習会などで忙しくあちこちを飛び回っている。もちろん空いた時間で自身のトレーニングも欠かさない。
また、全国各地で指導をしているとさまざまな人を指導してきた。指導した選手の中には、Jリーグで活躍している選手もいる。今でも、わざわざ島根まで会いに来てくれる選手もいる。
教え子の話をしている小川さんの表情はとても生き生きとして楽しそう。つられて筆者も笑顔になってしまった。
小川さんはいつも子供たちに言っていることがある。
「サッカー以外にも、たくさんのことを経験すること。サッカー以外のスポーツもたくさんすること。いろんな遊びを経験し、いろんなものを見てほしい。必ず、サッカーにも生きてくるからと言っています。」選手としてはもちろん、人間としても大きく成長してほしいという、小川さんの願いが感じ取れる。
最後に今後の目標を聞いてみた。
「まずは、日本のS級ライセンスを取得し、海外のS級ライセンスの取得にも挑戦したいですね。そして、Jリーグのチームでコーチや監督、または、海外のプロチームでコーチや、監督に挑戦したい気持ちがあります。」
中学卒業と同時に留学して指導者を目指した。
「生涯現役でサッカーに関わっていく。」
この思いは、今も変わらない。
今後の小川さんの活躍が非常に楽しみであり、期待したい。
追記
お話しを聞いていて、筆者もサッカーがしたくなってきた。
しかし、サッカーはチームスポーツ!試合をしようと思うと、11×2=22 が最低必要になってくる。気軽に楽しむ方法はないのか訪ねてみた。
「フットサルなら1チーム5人だから、たくさん集めなくても大丈夫ですよ。それと、試合がしたいときは、お問い合わせいただければ、対戦相手の紹介もしていますよ。あとは、フリーフットサルリーグに加盟していただければ、(個人でも、チームでも可)今のところ不定期開催ですが、火曜日の夜以外にフットサルコートに来てもらえれば、一人でも混ざってプレーされる人もいますよ。」
とのこと、筆者も一度参加してみようと思った。その他、誰でも気軽に楽しんでもらえるように、各種スクールの開催や、コート使用の受付もしているそうです。詳細は以下のリンクをご覧ください。ご興味のある方はぜひ、お問い合わせください。
フットサル場(写真上)
2面 同一人工芝
23m × 43m × 2面
屋根付きフットサル場(写真下)
23m × 43m × 1面
今回掲載の元気人データ
法人名 | 社団法人 島根県サッカー協会(S-Pitch) |
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所在地 | 松江市上乃木10-4-1 |
名前 | 小川秀樹 |
連絡 | TEL 0852-61-2112 |
ホームページ | http://www.s-pitch.com/index.html |
平成20年12月24日取材
詳しくはホームページをご覧いただくか、お問い合わせください。
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(社)島根県サッカー協会S-Pitch
施設利用に関してはこちらをご覧ください。 -
フリーフットサルリーグ
競技志向者も初心者も同じように楽しめること(ボーリング・ゴルフなどのように)
基本はチームとしての団体参加だが、個人参加者も同時に参加でき、楽しめることなどをコンセプトに運営しています。 -
女性フットサルスクール
(財)日本サッカー協会(略称:JFA)認定のフットボールセンターである人工芝ピッチを活用する協会の運営する、ビギナー向け、レディースフットサルクラブです。 -
ユースフットサルスクール
(財)日本サッカー協会(略称:JFA)認定の人工芝ピッチ(S-Pitch)を活用した、島根県サッカー協会の運営する、中学生・高校生のサッカー部に所属していない方を対象とした、フットサルクラブです。 -
キッズスクール
(財)日本サッカー協会(略称:JFA) 認定のキッズプログラム・モデル県として、全国初の協会が運営するサッカークラブです。