ステンドグラスのギヤマン工房 代表 村上奠俊さん(松江市宍道町)【#連載90】
村上奠俊(むらかみさだとし)さん
ギヤマン工房
村上 奠俊(むらかみさだとし)
S15.1.13 日原町出身
島根県松江市宍道町佐々布750
TEL・FAX 0852-66-1253
ホームページ 無
ギヤマン工房
宍道町佐々布地区、54号線沿い大森神社の近くの民家、村上さんの自宅がギヤマン工房だ。外からは、ステンドグラスの作品が2階に並べてあるのが見えた。さて、自宅は工房はどんな様子か楽しみにして伺った。
自宅は白壁に黒瓦の重厚な日本家屋、ステンドグラスの洋風な感じが合うのかと思いながら、玄関の引き戸を開けた。中に入って振り向くと玄関引き戸の上、ステンドグラスがはめ込まれ、日差しに鮮やかだ。赤い花が違和感なく美しい。
にこやかに迎えてくれた村上さんに案内されたのは、庭の前の部屋だ。この部屋に入ると窓も壁の棚もすべてステンドグラスで埋め尽くされていた。サッシ窓の両脇、壁をステンドグラスがはめ込んである。それも赤・黄色・青・黒のダイヤモンド柄だ。とってもカラフルなのに嫌味がなくなじんでいるのは、不思議だった。
壁の棚には、ランプなどの作品が並べてある。ステンドグラスは光が入らないと、くすんで地味なものだ。しかし、光が入ったとたん素晴らしい輝きが生まれる。その変化に感動したのだと村上さんは話す。
宍道町ギャラリーCでの作品展
村上奠俊さん
島根県日原町出身の村上さん、昭和34年島根県警に就職し、交通機動隊の白バイをはじめ、県内各地の交番勤務をした。現在は退職し、本格的にステンドグラスを作りながら、息子夫婦や孫たちとにぎやかに暮らしている。
多趣味だった村上さん、趣味の一つに写真があった。お休みにはカメラを抱え撮影旅に出かけていた。世の中はデジタル時代になり、なんだか写真に奥深さが薄れるような気がしていた。そんな頃、本屋でステンドグラスの本を手に取り見ていた。
ある日、新聞広告にステンドグラスキット販売の記事を見つけた。ランプなど3点の作品と道具がセットになっている。早速注文して作ってみた。オレンジと赤のガラスを組み合わせたランプを作った。作りながら、なんだかつまらないものが出来るなあと思っていた。ランプの明かりをともしたとたん、美しい色と光が広がった。感動した。12年前のことだった。ここから、ステンドグラスに魅せられた村上さんの作品作りが始まった。その第1作のランプは、工房の隅においてある。
多趣味な村上さん、思い込んだら一筋のタイプのようだ。
達筆と聞いた。話を聞いてみると、字が下手だったという。下手なら、筆を常にもち、書きなれることが一番だろうと考えた。10年筆と墨で日記を書いているという。
大きな赤いバイクの写真が飾ってある。バイクが趣味ですかと聞くと、白バイ隊の仕事を下りたとき、もうバイクに乗らなくていいとほっとした。駐在所勤務では、小さなバイクに乗ることが多く、バイクは仕事の延長だった。誘われてツーリングに出かけ、遊びのバイクを始めて体験し、はまった。
4~5年前、九州から佐渡島までツーリングをした。今年の夏は北海道へ行く予定だ。
奥様は、その多趣味に何も言われなかったのですか。
だまって何も言わず笑ってましたよ。その奥様は3年前に亡くなられた。
私が村上さんの作品を始めてみたのは、宍道町で開催されたステンドグラスの作品展だった。
浮世絵や日本画を題材にした制作が村上さんの特徴でもある。ステンドグラスとは思えない非常に繊細な描写にビックリ。
浮世絵と日本画
暗い展示会場には、光に映し出されたステンドグラスが並んでいる。正面に十二単の女性の作品、色とりどりのガラスで十二単の着物が美しい。ガラスをつなぐハンダの黒い線が細くて繊細。日本画は黒い線で輪郭を描き、色を重ねている、そんな雰囲気なのだ。
浮世絵の風景画、役者絵、田舎の風景など、思いもよらない作品達だった。
通信販売のキットから始めた村上さん、もちろん師匠はいない。独学で12年間作品つくりをしている。
日本画のような作品は、奥行き15センチほどの、木製ボックスにはめ込んである。ボックスの中には蛍光灯が収められ、コンセントにつなぐだけで展示できるようになっていた。
これも、村上さんの手作り、展示会をするにも、安全に簡単に展示するため考えたアイデアだ。
最初はランプシェードにアトリウムとなどを作っていたが、日本家屋になじむものをと考えた結果、浮世絵や風景画に思い至った。日本家屋の座敷、床の間横には障子がある。村上さん宅の障子は、紙を取り除き、柿の実がなった一枝が伸びている。葉っぱには虫食い穴もあった。こんな使い方もあるのかと、日本の風土に合う作品つくりを目指す村上さんの思いがわかった気がした。
自宅の工房では様々な道具類が
工房では
工房では二人の女性が作品つくりをしていた。一人は、初めて2年ほど手元には、紫陽花の花がいっぱい咲いているランプシェードを作っていた。完成間じかだ。もう一人は、今日始めて来たという、作品展を見てどうしても作ってみたいと来たそうだ。
工房の中は、様々な工具が並べてある、町工場のようなイメージ。窓際に並べてあるガラス見本が日差しに美しい。様々な色のガラスが整理保存されている。
ステンド用のガラスは、小さいもので30センチ四方のもの、これを作品の下絵の型紙に合わせて切っていく。カーブのものはガラスカッターで、長い直線や鋭角なものは、電動ノコで切る。
細かい模様も多いので、どんな小さな破片も捨てられないそうだ。また、ガラスは割れるもの、切るときの失敗も多くあるそうだ。
根気の要る作業、村上さんは大きな作品になると約1ヶ月かかるそうだ。集中しての作業になると、どうしても夜に作業することが多くなるそうだ。
今後作ってみたい作品は、屏風絵のような大作を作ってみたいと話した。
ステンドグラスで制作した屏風
教室
村上さんのステンドグラス教室は、宍道町の自宅のほかにも、何箇所か開催している。
松江市のホームデコ内での教室、三刀屋町、米子市、そして自宅。
どこの教室も、不定期の開催のため、詳しいことは、ギヤマン工房へ問い合わせてほしい。
お風呂のスリット窓にはめ込むステンドグラスをとの、注文品も置いてあった。このような注文も受け付けているそうだ。
最後に見せてもらった村上さん宅のお風呂場、はめ込み窓には「およげたいやきくん」のレコードジャケットの絵のようなお魚が泳いでいた。楽しそうなお風呂、きっと孫達は喜んだことだろう。
今回掲載の元気企業データ
法人名 | ギヤマン工房 |
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所在地 | 島根県宍道町佐々布750 |
氏名 | 村上奠俊(むらかみさだとし) |
業務 | ステンドグラス制作・教室 |
連絡 | TEL ・FAX0852-66-1253 |
ホームページ | 無 |
2009年5月1日取材