NPO法人奥出雲青山クラブ そば処清聴庵(島根県奥出雲町)【#連載62】
(取材・文章 tm-21.com)
【今回の元気企業】
NPO法人奥出雲青山(せいざん)クラブ
そば処 清聴庵
島根県奥出雲町上阿井内谷
電話 可部屋集成舘0854-56-0800
写真は左から 藤原友征代表とメンバーの藤原夫妻
NPO法人奥出雲青山(せいざん)クラブ
けっして、あおやまクラブではございません。
「人生到る所青山あり」の青山(せいざん)でございます。
辞書をひくと、木の青あおと茂った山(で、自分の墓をつくる所)。
とあった。
宍道湖の周りでは、すっかり葉桜となった4月14日、奥出雲町へでかけた。
そば処清聴庵は、三成の町から車で約20分山奥へ入った上阿井地区。奥出雲櫻井家と可部屋集成舘の敷地内にある。
桜・こぶし・山つつじが満開だった。気温は3度ほど低いようだ。
西に鯛の巣山、南に猿政山、清流の流れ、山が柔らかい芽吹きの色に包まれ始め、春の光に輝いていた。「青山」と名付けた気持ちがちょっとだけわかる気がした。
地元の退職者、団塊の世代のおじさん、おばさん達が集まって、農業・そば打ち・山歩きと楽しんでいたグループが、このNPO法人奥出雲青山クラブを立ち上げた。
メンバーは現在13人、入会金1000円、年会費500円というから、なんとお手軽なこと、会のモットーは「山」「そば」「酒」いたってシンプルだ。
みんなで楽しむことが一番との思いが伝わってくる。
代表 藤原友征(ともゆき)さんの豪快な話しっぷりと美しい奥出雲弁に、何度も聞き返しながら、話は盛り上がっていった。
櫻井家と可部屋集成舘
満開の桜と櫻井家離棟、左下は櫻井家本宅
(詳細は奥出雲町ホームページで)
奥出雲櫻井家は戦国時代から伝わり、広島郊外可部郷に住み、鉄山業を営んだ。
今から約340年前、この上阿井の地に移り住み、屋号を「可部屋」と呼び、「菊一印」の銘鉄を作り出した。
つまり、上阿井地区で良質の砂鉄を見つけ、各地に「たたら」を建設した。良質の玉鋼を生産し、その名は「菊一印」として、全国的に有名になった。という訳だ。
業績は松江藩に認められ、やがて「鉄師頭取」の要職を拝命し広く地域内の鉄山業総取締役となった。今でいえば、商工会鉄山業部会長とでも言いましょうか。
櫻井邸は国の重要文化財、歴代藩主が休息した上の間、松平不昧公が名付けたという「岩浪(がんろう)の庭」などなど、江戸時代にタイムスリップしたかのようなたたずまい。そのお宅に今も御当主ご一家は住んでいらっしゃる。
ちなみに、先日もNHKの番組で紹介されていた。また、TVドラマ「砂の器」にも、上の間や庭がロケ地となった。
櫻井家の日本庭園で記念写真におさまる観光客。
可部屋集成舘は、櫻井家に伝わる美術工芸品、和鉄鋼資料、古文書などが展示してあり、興味深い。資料を見ていると、櫻井家が地域の雇用、教育、インフラ整備など、様々な地域貢献をしていたことがわかる。
現在まで、地域の人たちが、櫻井家を尊敬し、地域の宝として大切に思っている事が、納得できた。
(櫻井家及び可部屋集成舘の詳細は奥出雲町ホームページで)
そば処清聴庵(せいちょうあん)
さて、そば処清聴庵は、櫻井家の敷地の中にある。
元は無料休憩所だった建物だ。櫻井家より、そば屋をやってくれないかとの依頼を受けた。藤原氏、地元でそば生産組合の代表をしていた。
根っからのそば好き、そば屋をやるなら、こだわりの水車挽き、十割手打ちそば。
早速、櫻井家にあった水車の修理、建物の改装、什器の調達、などなどすべて櫻井家が整えた。いよいよNPO法人立ち上げとなった。
なんでNPO法人なんですか?の質問。
任意団体で私が代表になると、ひとりでやっているように見えるのはいやだった。
それに、NPO法人は資本金要らないしね。
私達、借金はしない。これがモットーです。
なるほど、開店準備は櫻井家がすべて整え、資本金も要らないわけだ。
2006年秋、そば処清聴庵はオープンした。
土曜・日曜・祝日のみの営業、平日は予約してください。
こんな張り紙がしてあった。
もちろん、雪深い山奥、冬場は基本的にお休みである。
なんとも、楽しげな様子だ。そば好きが集まり、こだわりの手打ちそばを週に数日営業、余裕とゆとりを感じる。そば屋の座敷からは、清流と若葉のもみじ、山が借景となり美しい景色だ。
水車挽き
櫻井家の庭先を歩いていると、水車が回っていた。のぞいてみると、白いエプロン、頭にバンダナのおじさんが、そばを挽いていた。
「これ、使っているのですか。」
「そうだよ。水車で挽いたそばはうまいんだ。」
その先は、豪快な藤原氏のお話し。
水車にもいろいろあるようだ。水車で石臼をまわしすり潰す、これを回し挽き。水車で丸太を上下させたたき潰す、これを胴挽きという。
まわし挽きは、そば粉が乾燥していないと、団子になってしまって、うまく挽けないそうだ。
胴挽きは、乾燥していなくても叩き潰すのだから、大丈夫。
さてさて、どちらが美味しいと思いますか?
お米を考えてみてください、つやつやピカピカの新米、美味しいですね。
時期が過ぎて古米になったら、ぱさぱさしてきます。
これ、水分量の変化です。
新米を炊くときは、お水を控えめ、古米は水を多くします。
お分かりですね、そば粉も乾燥すると、香りもうまみも少しづつ水分と一緒に飛んでいくようだ。
挽いたそば粉は、手で握って崩れないのが上等。島根県に水車胴挽きそばは、この清聴庵とあと1箇所しかない。そこも、清聴庵へ水車見学に来ていたそうだ。ちょっと自慢だった。
ここまで訊くのに大変、藤原さんの美しい(?)奥出雲弁は非常に難しい!?
十割そば
十割そば、今までも何度か食べたことがあった。正直、ぷつぷつ切れてしまい、食べにくかったことを思い出す。普通の蕎麦にはつなぎに、やまいも・小麦粉などがいろいろ入っています。ぷつぷつ切れるのを防ぐためだ。
清聴庵の十割そば、細切りのつやつやしたそばだ。一口食べてビックリ、もちもちしている。
ほんとに、十割そば・・・・・・・?
藤原氏のウンチクが始まった。一口で箸を止め、聞き入った。
そばは果皮というそとの殻、種皮という甘皮が覆っている。
果皮は香りが命、種皮はつなぎの役割を果たすという。
水車胴挽きは、それぞれの持ち味を壊さず、挽いていくからうまい。
ふううん、二口目つるつるした食感とのど越しは、まるでつなぎが入っているようだ。
歯ごたえのもちもち感は独特だ。自慢するだけあるな。
細切りは、ゆで時間1分のため。ゆで時間が長くなると香りが逃げていくから。
そばを打つ、ゆでるお水も大切、ここでは福寿水という湧き水を使っている。
少し黒目の細いそば、実に美味しかった。
地酒簸上正宗をいただきながら、美味しいそばとそば談義に大いに堪能でした。
再びNPO法人奥出雲青山クラブ
このクラブのモットーは 「そば」「山」「酒」
「そば」と「酒」はわかりましたね。
「山」の話、藤原さんこのあと、またまた奥出雲弁で大いに語り始めました。
奥出雲の山々には、島根レッドデーターブックに載っている植物がたくさん自生している。しかも、自然群落が存在しているという。
ここは、水の美味しい豊富なところ。
だから、植物も動物もたくさんの種類がいる。
水が豊富だから、滝がたくさんあり、それを探して命名しているという。
山の植物も大切に保存していくため、山に入る。
「そば」「山」「酒」のNPO法人奥出雲青山クラブ、面白いでしょう。
こだわりの水車そば、食べに行ってみませんか。
ただし、予約していったほうが良いかもしれません。
藤原氏の豪快な話と美しい奥出雲弁を聞きたい方も要予約をどうぞ。。
(右の写真の案内を参考に⇒)
今回掲載の元気企業データ
NPO法人奥出雲青山クラブ
法人名 | NPO法人奥出雲青山クラブ |
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店舗 | そば処 清聴庵(せいちょうあん) |
所在地 | 島根県奥出雲町上阿井内谷764 櫻井家敷地内 |
代表 | 藤原 友征(ふじはら ともゆき) |
設立 | 平成18年8月2日 |
目的 | この法人は、奥出雲の自然を愛する人々に対して、 都市住民との交流をはじめとした、農山村の活性化に 資すると思われる各事業を行い、公益の増進に寄与 することを目的とする。 |
電話 | 昼間:0854-56-0800(可部屋集成舘) 夜間:0854-56-0057(立石商店) |
平成19年4月14日取材