和菓子店 木佐清月堂の3代目、木佐真一郎さん(出雲市平田町)【#連載94】
木佐 真一郎さん
昭和51年3月生まれ(39歳) 会社名 木佐清月堂
島根県出雲市平田町7548
TEL 0853-62-2758
木佐真一郎さん
昭和51年3月生まれ 39歳
和菓子店の3代目として生まれた。
小学生のころから、忙しい時期家業を手伝っていた。自然と和菓子職人になると子供心に決めていた。
高校卒業後、岐阜県の和菓子店へ修行に行った。
木佐さんとは、平田青年会議所の例会で会った。
青年会議所は20歳から40歳の若者が、町づくりや人づくりをテーマに勉強し、イベントや講演会を開き、活動する団体。
木佐さんは、現在理事長なのだ。
主に、平田町の事業主やサラリーマンなど、約20名が在籍している。
来年40歳になる木佐さんは卒業、そこでお話を聞かせてくださいとお願いした。
中の島にある木佐清月堂、まだ新しい建物。
木佐さんは、白衣姿で出迎えてくれた。
真面目そうな穏やかな人柄、職人さんというよりは、教師か公務員さんという雰囲気だ。
写真上から、弁慶どらやき、栗きんとん、岐阜で覚え持ち帰った栗のお菓子
岐阜での修行
修行先は、数店舗展開し、岐阜や名古屋のデパートにも出展する和菓子店。
岐阜の銘菓は鮎の菓子、どら焼きのような生地に求肥餡が巻いてあり、鮎の顔が焼印されている、皆さんも食べたことがあろうか、有名なお菓子だ。
そこで、まずは鮎の皮の焼き方、同じ大きさ、同じ厚さに焼き上げるには、経験しかない。デパートやお店で、焼きの実演をするため、毎日焼いた。
白餡は白いインゲン豆を煮て作る。
毎日扱っていたことで、しろ餡でアレルギーがでた。
小麦粉もアレルギーになった。
現在は、マスクなどで対応している。
岐阜では、斐川の福泉堂さんも一緒だったという。
岐阜は栗の一大産地、栗を使ったお菓子もたくさん作った。
毎日栗の皮むきにおわれたという。
5年間の修行、岐阜で覚え持ち帰った、栗のお菓子をいただいた。
栗餡を栗の形に作り、周りを小豆餡で包んだ羊羹、栗の香りと素材の味がそのまま感じられるお菓子、おいしかった。
店舗(上)工場(下) 餡を作るための大きな鍋
木佐清月堂
店舗横には、ちょっとした応接間があり、そこでお菓子をいただいた。
栗の羊羹と祖父が作り始めた栗きんとん。
飾り棚には、素敵な茶碗が飾ってあり、その器を使って抹茶をご馳走してくれた。
私は、一番気に入った黒い抹茶碗をお願いした。
余談だが、陶芸家 安食ひろさんの作品だそうだ。
安食ひろさんの茶碗は、20万円以上はするもので、なかなか手にすることは私にはないこと、薄い口当たりがとっても気持ちよい茶碗だ。
黒に抹茶のグリーンが映えて美しい。
ご親戚だそうで、茶道も安食ひろさんの奥様に習ったそうだ。
店舗のショーケースには、生菓子や焼き菓子がずらりと並んでいる。
生菓子が7~8種類、饅頭やどら焼きなどの焼き菓子が7~8種類、季節に応じて作る。
木佐さんの家は、もともと木佐本家の番頭を努めた家だそうで、祖父が京都で修行し菓子店を始めた。
5年の岐阜修行から帰ったころは、祖父も現役で3代で働いた。
きっと、おじいさんも喜ばれたことだろう。
そのころは、本町通りで開業していたが、川の改修工事のため移転することとなった。
現在の中の島で店舗を開店した。ところが、2007年、不用意な出火で店舗は全焼してしまう。
半年間、まだ残っていた本町通りの工場で菓子を作り、店舗を建て直した。
工場を見せてもらった。
和菓子の命、餡を作るための大きな鍋が並んでいる。
ちいさな焼き鏝がたくさんある。干支や祝などなど、干支の焼き鏝は十二年に1回しか使わないものだが、きれいに磨いてある。
釣鐘の焼き鏝があった。
木佐清月堂のどら焼きの袋には、弁慶の絵が描いてあり、どら焼きには釣鐘の焼印が施される。
見事な。「誰が描いたのですか」
なんと、岐阜の菓子店のご主人は日本画家だそうで、描いてくれた。
店舗には、同じ弁慶の襖絵がある。
これも、火事で焼けてしまったが、2枚目を描いてくださったそうだ。
代々伝わる焼き鏝(こて)の数々
和菓子職人
平田では、お茶の文化が色濃く残っている。
和菓子でお茶を飲む、そんな日常が日々営まれる。日本人ですね。
しかし、時代の流れか和菓子店は現在7~8軒、昔は倍以上あったという。
最近、若い人も和菓子を食べるようになってきたと、木佐さんは言う。
和菓子の材料は、すべて畑で獲れるものばかり、米・豆・砂糖が基本だ。
つまり、ヘルシーだと認識されてきたのかもしれない。
個人客のほか、お茶会用の和菓子。
そのほか、3~4年に一回、出雲大社の例祭用のお菓子の依頼があるという。
これから、お正月和菓子店は忙しくなる。
正月用の生菓子の注文がおおくなる。
年末は、31日まで仕事が続く。
お正月といえば、花びら餅。
関西出身の私は、正月といえば花びら餅、白味噌餡にごぼうが入ったお餅。
昔は、この地方では見かけることがなかったが、近年はたくさんある。
木佐さんのお父さんが、出雲地方で初めて作って売り出したという。
正月がすぎると、桜餅の季節。
お菓子にも流行があり、最近は桜餅の皮が厚くもっちりし粒餡だそうだ。
しかし、木佐さんの店では、昔ながらの薄い皮にこしあん。
昔ながらを守り続けている。
木佐さんは、職人としてアンテナを張り巡らせる。
青年会議所の活動も、異業種の仲間と話すことで刺激を受け、平田の自然や季節からお菓子の創作アイデアをかんがえるという。
若者にお菓子を食べてもらいたい。
ここでしか食べられない、ここに来て食べるお菓子、そんな思いを語ってくれた。
静かに話す木佐さん、職人としての熱い思いが見て取れた。
横では奥様がにこにこ微笑んでいる。
お菓子とは無縁だった奥様も、店の手伝いに「たいへんです」といいながら、励んでいる。
きっと、二人で新しいお菓子、昔ながらのお菓子、はぐくんでいくことだろう。
木佐清月堂の桜餅、買いにいきますね。
店頭に立つ木佐さん
今回掲載の元気企業データ
法人名 | 木佐清月堂 |
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所在地 | 〒691-0001 島根県出雲市平田町7548 |
代表 | 木佐真一郎 |
業務 | 和菓子製造販売 |
連絡 | TEL 0853-62-2758 |
2015年11月16日取材 (tm-21.com)