おもひで屋(出雲市塩冶町)【連載#49】
古い着物のリメイクで「思い出」まで再生する おもひで屋 代表・阿部早苗さんに熱い思いを聞いた。
【今回の元気人】
着物リメイク専門店 企業組合おもひで屋
代表・阿部 早苗(あべ さなえ・出雲市)さん
【おもひで屋ホームページ】
〒693-0021
島根県出雲市塩冶町766-2
TEL&FAX(0853)23-6347
mail:mode@omoide21.com
営業時間:am.10:00~pm.6:00
定休日:水曜日、日曜日、祝祭日
おもひで屋 レトロモードショー2006
2006年5月13日、旧JR大社駅で「おもひで屋レトロモードショー2006」が開催された。
旧大社駅は1924年築木造平屋建ての和風駅舎、大社線廃線後も建築当時のまま保存され、2004年国の重要文化財に指定された。
高校生当時この駅を利用していた阿部さんにとって「重厚でレトロな駅舎の魅力を県内外の人たちに知ってほしい」、その思いは「たんすの中に埋もれている、古い着物への思い」と重なる。
羽織や長襦袢から制作したシャツやジャケットのカジュアルなものから、フォーマルドレスやウエデイングドレスまで、約60点、外国人を含む20人のモデル。
昔の制服姿の駅長が切符切り、神々をイメージした衣装や舞踊、照明、音楽で出雲らしさも表現したリメイクフアッションショーは、県内外から詰め掛けた観客500人を魅了した。
(取材・文章 tm-21.com)
おもひで屋 レトロモードショー2006 旧JR大社駅 2006年5月13日
「おもひで屋」開店の経緯
レトロモードショー2006 フィナーレで花束を受け取る阿部早苗さん
短大や専門学校で服飾を学び、学校教員を経た後、障害者施設の職業指導員を1年ほど経験する。『高い能力を持っていながら、身体が不自由なために能力を発揮する場がない人たち、きっと何かできることがあるはず・・』と一念発起し、福祉のまちづくりの市民団体「出雲いきいきネットワーク」を立ち上げ、活動する。
障害者のための共同作業所も立ち上げた。
ちょうどその頃、仕事面では洋裁教室を主宰する傍ら、創作活動も開始する。
おばの遺品の着物の美しい柄に魅せられ、ジャケットに仕立て直したのがきっかけとなった。できあがったジャケットで街を歩くと予想以上に好評、着物リメイク相談が相次いで舞い込んだ。
- 「たんすの中の宝物である着物、絹の寿命は、人の寿命と同じ100年。親子3代受け継がれるという。埋もれている着物を表舞台に、価値あるものに再生したい。」
- 「埋もれている能力を生かしたい。」
人にも着物にも同じ気持ちを抱いたと阿部さんは言う。
このような思いから「おもひで屋」は誕生した。
「おもひで屋」は企業組合
リメイクされた むらさきのロングドレス
「おもひで屋」は企業組合という組織形態。
デザイン・パターン・裁断・着物ほどき・洗濯・縫製など様々な工程にそれぞれ専門担当者がいる。
みなが同じ立場、みなが主人公になれる。それぞれの技術を持った人たちの共同作業だ。
皆さん自宅での個人作業、組織としてのまとまりや動きかたは、鈍いところがあるが、従業員ではなく、個人事業者として、一作品を一人で担当しているため、それぞれの技術者の誇りと責任感により高い品質が保たれている。
5月のレトロショーは皆さんのネットワークつくりに大いに役立っている。
阿部さんはデザインとパターン担当、じっと着物と向き合い、語り合い、単なるリサイクルではなく、新たな命を吹き込みたいと思いをデザインにこめる。
一作目、おばの遺品の着物
おもひで屋のアトリエと
リメイク作品(出雲市塩冶町)
第1作目、おばの遺品の着物をリメイクしたジャケット、今も大切に持っている。
袖口やすそは擦り切れ汚れているが、捨てられないという。
子供の頃から、身の回りには着物がたくさんあった。
生活の中で、普段着・寝巻き・晴れの日の着物等。
着物が好きだから、着物はそのまま着て欲しいという思いも強い。
しかし、たんすの肥やしとして死蔵されたままではかわいそう、
そして、もったいない、年間持ち込まれるものも含めて300着手がけるという。
「幼い頃死別した顔も覚えていない父の着物を洋服にしたい」
そんな、着物にまつわる話を聞くことが好きだと言う思いを受けて毎日着物と向き合っている。
地域・人・着物・建物など様々な出会いを大切にしたい!!!
2003年、出雲文化伝承館で「おもいで屋レトロモードショー2003」開催、そして2006年、「おもいで屋レトロモードショー2006」を旧JR大社駅で開催、県内外から注目を浴びた。
そして、全国展開へむけて発信する方向性が見えてきた。
人前に出ることは得意ではないという阿部さん、しかし皆さんに知っていただくということの大切を実感しているという。
「大社駅でのショーがちまたの話題となり、たくさんの感動を呼んだのは、服もさることながら、大社駅の時代を重ねた圧倒的な存在感にあると思う、私のいただいた花束の半分は駅舎がもらったものです。」と話す。
地域・人・着物・建物など様々な出会いを大切にしたい!!との思いが伝わった。
おもひで屋 履歴
2001年09月 | 島根県、松江市共催「しまね環境フェスティバル」キモノ利フォームファッションショ- |
2001年10月 | 着物地をオーダーメードで洋服に作り直す専門店としてオープン |
2001年11月 | 出雲市制60周年記念事業リフォームファッションショ- |
2002年09月 | 中国電力リフォームファッションショ- |
2003年09月 | おもひで屋レトロモードコレクション2003(出雲文化伝承館)開催 古い着物を素材にした「たそがれ色」ブランド発売 |
2004年10月 | 全国小学校家庭科教育研究会全国大会にてレトロモードショーを披露(出雲市民会館) |
2005年09月 | 中国電力リフォームファッションショ-&ボサノバ出演 |
2005年12月 | テレビ朝日「チャレンジにっぽん!」の取材を受ける |
2006年01月 | 高級ラインのブランド「絹の道」を発売 |
2006年05月 | レトロモードショー2006(JR旧大社駅舎)を開催 |
(平成18年6月28日取材)