臨水亭(松江市京店)【連載#48】
【今回の元気企業】
宍道湖畔の老舗料亭
臨水亭
亭主 西尾 泰賢さん
(写真右は奥様)
〒690-0843
島根県松江市末次本町13
TEL 0852-21-4839
FAX 0852-21-4984
老舗旅館まもりつたえる伝統文化の発信。
平成18年6月24日(土) 臨水亭では、京庭の伝統を生かした独創的な作庭で世界的に有名な京都造形美術大学客員教授 小野陽太郎氏を招いて講演と食事、お茶席の会を催した。
普段、お茶会とかあらたまった席での食事会などとは縁遠い筆者であるが、たまにはしっとりと松江文化に浸るのも良いかと思いお邪魔してみた。
(取材・文章 tm-21.com)
松江市末次町 京店通りをいくと 打ち水もすがすがしい石畳の奥に臨水亭はある。
ガラスの引き戸を開けると黒光りする柱や天井に創業115年(明治23年創業)という老舗旅館の趣が感じられる。坪庭の石ひとつにも永い歴史があるようだ。
(大橋川・宍道湖を臨む臨水亭の日本庭園と小野陽太郎氏が手がけた蹲)
小野陽太郎氏と臨水亭
ろうそくの灯りと宍道湖に映る街の灯りの中で尺八を奏でる小野陽太郎氏
小野陽太郎氏は竹内流古武道十六代師範であり、庭師と古武道の精神の共通性を説き、造園研究と共に古武道の修行に励んでいる。臨水亭の庭の蹲(つくばい)も小野氏が手がけた。
講演は「茶の湯と庭そして武蔵の心」と題して、宮本武蔵筆「枯木鳴鵙図」の掛け軸をツールとして、宮本武蔵の人として兵法家としてそして芸術家としての心を読み解いた。
二階の大広間は古い建物そのままで、欄間の白菊の絵、鳥の透かし彫り、雁(がん)の釘かくしの彫金、そして小野氏が真剣を舞うように居合い抜き、時間がとまったような空間だった。
庭の露路を歩くと、鎌倉時代の五輪塔の台座をイメージし作ったという蹲(つくばい)が目を引く。小野氏が手がけた蹲(つくばい)である。 ろうそくの灯りと宍道湖に映る街の灯り、小野氏の尺八の音だけが流れる、静かでタイムスリップしたような時間が流れた。(小野陽太郎氏のホームページ 聴風館造園研究所)
懐石料理と茶席
薄茶席と涼しげな初夏の着物をまとった奥様のお手前
懐石料理が始まる。
ごま豆腐に始まり、鱸(スズキ)、手長えび(河海老)、うなぎと宍道湖の幸を美しい器にあわせた料理が続く、そして薄茶席、臨水亭亭主西尾泰賢氏のお話と涼しげな初夏の着物をまとった奥様の手前、初夏の宵を堪能した会だった。
松平不昧公(松平家6代から8代まで)が臨水亭によくお越しになったそうだ。
正月は毎年必ず立ち寄ったとか、お茶席に出た棗(なつめ)は不昧公より拝領の品、ふたの裏に不昧公の号が記してあった。
亭主の話によると、まだまだ、資料や古文書、お道具類など、自分達にもわからないものがあるという。これら臨水亭が守ってきたものを、皆様に見ていただくようこれからも、茶懐石を開催していくという。
各部屋にしつらえた、掛け軸やお道具類、みな古いものである。解説してもらうと、皆さん『ほおー!!』と声を出す。
永い歴史の中で守りついだ伝統文化、大切に保存しながら、松江の新しい文化として、どう発信していくか、亭主西尾氏はチャレンジしていく。
美味しい料理とお酒、見知らぬ人たちとの楽しい会話。
戦国時代、武士の間ではお茶会が盛んで、織田信長は茶会禁止令を出したほどとか。
堅苦しいと思われがちな茶懐石だが、お茶会の楽しさが少しわかったような気がする。
臨水亭は、日本のそして松江の伝統文化を新しい形で発信しようとしている。
平成18年6月24日取材