矢吹 奎(やぶき けい、鳥取県西伯郡)さん【連載#44】
全国陸上競技愛好会会長
【今回の元気人】 全国陸上競技愛好会会長 矢吹奎さん(鳥取県西伯郡南部町)
山陰両県で行われる陸上競技大会で、ほとんど毎回顔を出している矢吹奎さん。
写真撮影に記録のチェック。陸上競技に対する情熱は「選手以上?」とも思える矢吹奎さん。
陸上競技の魅力について聞いてみた。
(取材・文章 多々納 健一)
陸上競技好きの集まり
会報誌「陸上の友」は創刊500号を数える。
全国に約200人の会員を持つ「全国陸上競技愛好会」。毎月一回発行の会報誌「陸上の友」は、好記録を出した選手への賛辞はもちろん、大会運営、陸連への注文などの手厳しい投稿が掲載されている。
矢吹奎さんは、東京オリンピックの前年、1963年に発足した当時からの運営メンバーで、15年前から会長を務めている。会報誌の編集作業は、会の主要メンバーが分担し、写真は矢吹さんが主となり、記事は会員からの投稿によって成り立っている。
「最初は4人で始めました。お互いの事は全く知らなかったのですが、陸上ファンが語り合う場を作りたくて、神戸市在住の橋本憲史郎氏の呼びかけに自然と集まりました」と、当時を振り返る。 発足当初、陸上競技の専門誌である陸上競技マガジン(ベースボールマガジン社)で会員の募集を呼びかけ、48人でスタート。少しずつ会員は増え、今の会員数になった。
会員の面々の中には陸連幹部の家族もいるという。毎年数回、インターハイや国体などの全国大会で集まる会員で“観戦合宿”と称した顔合わせ会を開いている。 「陸上競技好きが集まるので話が尽きません。毎回楽しみですよ」と矢吹さん。
陸上競技との係わり
陸上競技コレクターでもある矢吹さん。陸上競技マガジンは創刊号から所有している。
矢吹さんが本格的に陸上競技と係わり出したのは、教員になってから。鳥取陸協の記録部長になった昭和43年頃からは、もっと深く入り込むことになる。
それまで曖昧だった記録の集計をすべて見直す作業に取り掛かった。 「その頃は、インターハイ国体などの全国大会の予選で出された記録が、県の記録に入れられていないことが頻繁にありましたので、それじゃいかん」と思い、各全国大会にも、自費で足を運ぶようになった。
矢吹さんによってまとめられた記録はその後、毎年度末に発行される「鳥取県陸上競技記録集」として定着した。後に島根県も同じスタイルのものを発行するようになり、山陰両県の記録集の基礎を築くことになった。
作業を始めた当初は「そんなことをやって何になる」と陰口を言う人もいたというが、「常に良いものを作りたかった。それに好きな事をやっていたので、つらいと思ったことはありませんでしたよ」と、笑って話してくれた。
趣味は歌舞伎観賞と写真と陸上競技
ファインダーを覗いて選手を狙う姿は、プロカメラマン並み。
教員を定年退職した矢吹さんは学生寮の寮長として東京へ進出した。最初は慣れない事だらけだったが、「折角東京に出たのだから、一度くらいは歌舞伎でも見ておこう」と、歌舞伎座へ。その一度で、どっぷりとはまってしまった。
最高で年間50回も行くほどの大ファンになってしまった。8年半務め、鳥取に帰ることになったのだが、その後も月に一度は歌舞伎観賞のために上京している。 また、山陰両県の陸上競技の大会はもちろん、全国大会や世界陸上を追っかけ、写真を撮っている。
止まらない向上心
記録集や会報誌を作るときでも、常に完璧さを追求する矢吹さん。しかし「なかなか、難しいですね、印刷ミスを見つけては悔んでいましたよ」。
そんな矢吹さんだったが、ある時先輩から「完璧な物は人間には無理。出来るだけミスを少なくする努力をするよう心掛けてみては」とアドバイスを受け、以来気持ちが楽になったという。それでも「競技を見る度に、常に新しい感動を得ています。それをもっと伝えていきたい」と話す矢吹さん。
常に“今以上”を追いかけ続ける姿は、記録向上に貪欲な選手そのものだ。
入会のご案内
全国陸上競技愛好会陸上競技ファンなら誰でも大歓迎で、月会費600円で入会できる。月1回発行の会報誌「陸上の友」が購読できる。
入会希望の方は矢吹さんまで
電話:0859-66-5920
2005年11月取材