奥出雲ボランティアグループ「ポケット」代表・岩沢彩子さん(奥出雲町)【#連載100】
奥出雲町
奥出雲町 島根デザイン専門学校とたたら刀剣館のそばに、もと吹きガラス工房があった建物がある。ここで、3月5日から6日奥出雲ブックカフェが開催された。
先日までの雪がうそのような青空、ブックカフェが開かれる建物は、木造のこじんまりした建物、ログハウス風のしゃれたものだった。
付近の山々は先日の雪で、きらきら輝いている。駐車場には、ずっと前に積もって雪かきされた雪と言うより氷のようなものが、小山のようになっており、その上に真っ白な新雪がふんわり積もっている。 ええー、まだこんなに残っているんだ。びっくりだった。
中国山地の山間、出雲の奥地「奥出雲」地方として、平成17年仁多町と横田町が合併して誕生した。人口は15000人で、古事記や日本書紀に記された「ヤマタノオロチ退治」に、スサノオノミコトが降臨した「鳥髪の峰」 船通山や出雲風土記「神話」の舞台となった地などが、数多く残っている。
また、古くから「たたら製鉄」が栄え、今でも世界で唯一(財)日本美術刀剣保存協会が、古来からの「たたら」操業を行い、日本刀の原料「玉鋼(タマハガネ)」を生産している。
なんとも神秘的な古い歴史と文化が、現代に息づいている。
ブックカフェは、町内ボランテイアグループ「ポケット」が主催し、今回で4回目となる。
この日は「森 達也カフェ」と銘打って、ドキュメンタリー映画制作や出筆業「森 達也氏」を招き特別店長として、店長のトークショーや店長作品上映など、盛りだくさんな内容だった。
ゆっくり読書したり、語らったり、ゆったりとしたブックカフェ
岩沢彩子さん
明るいにこやかな笑顔に迎えられた。 岩沢彩子さん、このブックカフェの仕掛け人の一人、昭和44年生まれの41歳、とてもそうはみえない、可愛い人だ。
群馬県藤岡市出身、13年前にこの奥出雲にやってきた。
群馬県にいたときは、やはり鳥取県と島根県の区別がつかなかった。私たち島根県人が、関東付近の県の位置関係が良くわからないのと同様だった。
そして言葉、まったくわからなかった。
雪、群馬県でも藤岡市は、まったく雪は降らないという。
冬の奥出雲、暗い・寒い・冷たい 三拍子そろったこの地の印象を聞いてみた。
即座に、「いいところですよ」と答えた。・・・・・・どこがあー?・・・・・・
「人とのつながり」これが一番うれしく、大切な財産だという。
もちろん、13年前始めて移り住んだころは、知り合いもなく寂しいものだった。 周りの反応も、よそ者にたいして、距離を置いたものだった。
しかし、よそ者はよそ者なりに、自分を発信していった。
いつしか、周りの反応は、優しく暖かいものに変わってきたのだった。10年近くたっていた。
「自分を発信する」 学校や幼稚園での「よみきかせ」グループに参加。
同じ志の人達との出会いとつながり、ここに自分自身の居場所を見つけた。
ブックカフェを主催した「ポケット」につながっていく、ボランテイア活動になった。
『ポケット』の皆さん、年齢も職業もまちまち
ポケット
「ポケット」は、奥出雲町内ボランテイアグループ、有志の寄り合い所帯だ。
有志がそれぞれの思いをもって、集まっている。
「この町に素敵な図書館を」
「田舎をなんとかせにゃあいけん」
「何かしたくて、ウズウズしてる」
「みんなが集まるからわたしも・・・・・」
悩み・迷い・笑い・楽しみながら、年齢も立場も男も女もひとりひとり違う人達が、集える場をつくろうと、ポケットを創設した。
ポケットの代表は、岩沢さん。 メンバーは、20代から70代20人あまりが集う任意団体だ。
男女の比率が4対6、結構男性の参加者が多いのだ。
このような団体は女性がほとんどの団体が多い中、男性参加者が多いのは面白いとおもう。
皆さんステキな図書館をの思いで、集っている。
備品や本の搬入陳列、カフェの準備、すべてがポケットさんの手作り
ブックカフェ
明るい店内には、カフェスペースにも、その手前の部屋にも椅子やソファーがおかれ、絵本や料理の本、小説などなどさまざまな本がおいてあり、お客さんは思い思いに座って本を読んでいる。
一番端の部屋では、箱に本をつめて無料から500円くらいまで、本のフリーマーケットがあった。 出店者は、捨てるのは忍びなく、誰かに読んでもらいたいと話す。
その気持ちよくわかる。
私はしばし、ソファーにすわって、絵本を手にとりながめていた。 なんだか、とってもくつろいで、こんな図書館があったら、ほんとにいいなあ・・・・・・。
メンバーさんは、それぞれ得意分野があって、パンフレットはきれいな写真集のようで、これも写真が得意な人、パソコンが得意な人、手作りで素敵なものだった。
カフェのお茶にはかかせないスイーツ、これもお菓子作りの得意な人がいるのだそうだ。
よくよく眺めていると、本の選び方がおもしろい、てんでバラバラ、なんでこんなふうに選んだのかしら。聞いてみると、奥出雲町公民館の図書室から借りたもので、選択肢がなかったのだという。 しかし、少ない選択肢の中で、いろいろなジャンルを選んだポケットさんたち、本好きなのだとわかる。
よくよく眺めていると、椅子やソファーテーブルがバラバラ、これもあちこちからあまり物を、借りてきているそうだ。
もちろん、備品の搬入・本の搬入・カフェの準備、すべてがポケットさんの手作り、力仕事が大半である。
今回で4回目、不定期ではあるが、楽しみに待っているひとも多い。
一日に何回もやってくる高齢者もいるという、子供たちの声も響いている。
心地よい居場所になっているのだろう。
笑って、楽しみながら活動する、ポケットのみなさん、本のあるくつろぎの場所、また作ってください。
笑顔がとても素敵な岩沢さん
岩沢彩子さん その2
奥出雲にやってきたとき、5歳だった息子は18歳になった。
小さなころから料理人になりたいという夢をかなえるため、母の元を旅立っていく。
子供たちは旅立っていく。
岩沢さんは、この地で地元の人達と、地元のために活動していきたいという。
旅立った子供たちは、羽を休めるために、いつか帰ってくるかもしれない。
きっと、素敵な居場所を用意していることだろう。
2011年3月5日取材 写真・記事 ティーエム21