田中 武子(たなか たけこ・島根県松江市)さん 【連載#51】
【今回の元気人】
洋裁指導員
田中 武子(たなか たけこ)さん
「自分で作ればオリジナル」
そんな世界に一着しかない服を作る楽しさを教えるのが、洋裁指導一筋の田中武子さん。
基礎から生地選びなど、全てが魅力的と話す田中さんにその奥深さを聞いてみた。
(取材・文章 多々納 健一)
テルサで講師として活躍
親切丁寧な指導は生徒さんたちに大好評
松江テルサ文化教養教室で週2回開催される洋裁教室。その講師を務める一人が田中武子さん。
生徒さんに田中さんの洋裁教室について聞いてみると、
「私達の腕を見据えて教えてくれる。技術だけでなく、洋裁の楽しさが学べます」と、
その親切丁寧な指導方法は大好評だ。
田中さんの教室では、主に着物の古布を素材とした洋服作りなどを基礎から指導している。
「最近では既製品の服ばかりがもてはやされていますが、世界に一着しかない自分の服を作る嬉しさは何事にも変え難いと思います」と話す田中さん。
ご自身の服は上から下まで全てが手作りの物だ。
古布との出会い
生地の組み合わせは無限。
古布が世界でたった一つの服として生まれ変わる
根っからの洋裁好きな田中さんだが、その情熱が冷めた時期もある。原因は生地。量産品のプリント柄が主流となり、創作意欲を掻き立てるものがなくなりつつあったのだ。
そんな時に出会ったのが古布。ある古布販売事業の手伝いで大量に積んであった着物の古布の山を見た時だった。
「なんて素晴らしい柄なのでしょう。」
率直な感想だったという。それまで冷めていた創作意欲にも、一気に火がついた。
日本の伝統技術を駆使して染められた着物の柄はプリント柄とは比べ物にならない。その柄を一度見ると、次々とつくりたい物のイメージが沸くのだという。
「着物の時は単純にそれだけでも綺麗なものですが、古布として違う生地を組み合わせることで、更に素晴らしい物ができます。その組み合わせは無限ですよ」
一時期プリント生地では“飽き”を感じていた田中さんも、着物生地の組み合わせは、「やればやるほど奥が深い」と至福の楽しみを感じている。
服飾指導員として
田中さんの服は全てが手作り。
これもお気に入りの一着
広島出身の田中さんが、洋裁と出会ったのは戦時中のこと。
疎開先のお宅にあったミシンの周りで遊んでいたことがきっかけだった。布の切れ端を縫い合わせる遊びが本格的なものに。
初めてきちんと作ったのは「ふくろ」だった。
その後、広島の服飾専門学校の指導員を経て、結婚を機に島根へ。雇用能力開発機構ではアパレル科の指導員として活動していた。そこでは日本人だけでなく、企業が招致した外国人労働者への指導も行っていた。実は田中さん、「これが技術流出につながるのではないか?」と危機感を感じたという。
技術の継承
「以前は、島根県内の製造業といえば、食品に次いで従業員数は第2位でした。今は見る影もありません。そのほとんどが外国に流出していったのです。アパレルなどの技術は、県民性から見てもこの地域で育むにはぴったりだと思いますよ」
田中さんは、昨今の技術海外流出を嘆く一人でもある。
しかし、地道な技術継承活動を続ける田中さんは、こうも話す。
「手先が器用な日本人にとって、洋裁は最適なものの一つです。ものづくりの国としてはこれからももっと大切にして欲しい技術です。一人でも多くの方に継承して欲しいと思っております。」
プロフィール・データ
着物だった生地も普段着として再生
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松江テルサ文化教養講座
服飾 田中教室 -
毎週 水・木曜日
- 午前の部 9:30~12:00
- 午後の部 13:00~15:30
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月2回/3,000円
月4回/5,000円 -
連絡先
電話 0852-23-6375
携帯 090-9509-0840
平成18年3月取材