長尾 康一(ながおこういち、島根県浜田市)さん【連載#45】
【今回の元気人】 長尾康一さん(島根県浜田市・島根県老人クラブ若手委員長、浜田市老人クラブ連合会副会長、シニアネットはまだ会長)
シニアネットはまだホームページ“ぴんぴんコロリ倶楽部”
シニアネットはまだ“ぴんぴんコロリ倶楽部”
なんとまぁ可愛らしい名前かと思いきや、ぴんぴん活躍し、ある日突然コロリと極楽浄土へ旅立ちたいという高齢者の切なる?思いが込められていました。
老人クラブは日本で一番大きな民間の団体だそうです。
浜田市老人クラブ連合会副会長をしている長尾康一氏がこの倶楽部を設立したのは、この先避けては通れない「ネット社会」への高齢者(シニア)の参加が目的でした。。
(取材・文章 佐古 有紀子)
キャッチフレーズは「あなたもICTリーダー!!」 C=コミュニケーション
シニアネット浜田 講習風景
老人クラブで活動されていた長尾氏がクラブの仲間30人位に呼びかけ、パソコンの習得技術を学びたいと市に交渉した事からはじまり、講師の方に教えてもらっていたところ、10人、また10人とみるみるうちに辞めていった。その理由はこうだ!
パソコンを教える人が高齢者向きでない。テンポが速い上に、わかっている人が教えるため同じ目線ではない。高齢者の中には眼が遠くなりつつある人、手が震える人など若い人と同じ状態ではない。
次に学べる機会が少ない。高齢者は常に繰り返し学んでいないとすぐに忘れるため、いざという時の機材や教室など学べる環境が少ない。よってサポート体制も整備されていない。自宅での操作上わからない事があったとしても、電話では伝わりにくく、問題解決に時間がかかる。
そのような中で結論として出されたのが、高齢者には高齢者!! 同じ目線、同じ環境が必要。ならば自分達で作ろうと「シニアネットはまだ」通称ぴんぴんコロリ倶楽部が誕生した。
ステップ1の部屋 講習風景
目的は、仲間づくりをして、その中からICTリーダーを育て、情報活用をしながら高齢社会を豊かにするということだ。
実際この倶楽部で学び、新たな参加者にサポートをし、各地でリーダーとして活躍されている高齢者が年々増えている。その活躍振りから「島根あいてぃ達者」の県知事賞を3年連続「シニアネットはまだ」の会員が表彰されている。
また、IT資本論の著者でもある近 勝彦氏がこの倶楽部団体「シニアネットはまだ」を紹介、絶賛されている。
体験から学んだこと
ステップ2の部屋 講習風景
そのような中で、長尾氏は現在一冊の本を手がけている。その名も「ぴんコロICTテキスト」
これは単なるパソコンの本ではない。なぜこのような本を作成しようと思ったのか?
まず誰もが思うだろうが、パソコンのテキストを見ても、カタカナが多く初歩的なことは削除されている事があるため何回読んでもわからない。高齢者にはなおさらだ。例えば、アドレスを書いて・・・若い人なら即通じる言葉だが高齢者には、住所を書いて・・・の方がわかりやすい。「アドレス=住所のこと」そういった高齢者向けの用語解説も記されている。「シニア=高齢者」初めにこの言葉から学んだ人もいるだろう。
詳しい説明はCDに入っているが、CDに入る前には項目ごとに、めあて、主な操作、コメント、留意事項が記されている。これによって、これからこういうことをすればこんな物が出来上がる、などを念頭に入れてからゆっくりとした手順で学習していく。
そして実際に作られた作品の紹介、仲間作りの大切さ、サポーターとしての心構えなど3部構成に作られている。これはシニアがIT社会に対応するための整備の中のひとつとして、シニア達が実体験に基づき、研究に研究を重ね、シニアの観点から捉えた、要は高齢者向けの本だ。
なぜパソコンを学ぶのか
ぴんコロICTテキスト
平成18年春出版予定
定価1,000円程度 HP上で発売発表
長尾氏はこう考える。パソコンを扱う事により元気をもらう(楽しさや達成感、可能性が広がる)便利である(情報が入り生活が豊かになる、節約につながる)仲間作りができる(離れていても交流できる)そして役立ち感がある(喜ばれることによりサポーター、リーダーとしての充実感が得られる)
10人そこそこまでなった倶楽部も、話を聞いた人がちょっとやってみようかと人が人を呼び、今では会員数約120名まで膨れ上がった。「ぴんぴんコロリ倶楽部」とは高齢者の切なる思いではなく、高齢者の前向きな思いからくるものだった。
2005年12月取材