梶谷 弘(かじたに ひろし・島根県出雲市平田町)さん 【連載#49】
【今回の元気人】
骨董品の店:骨董 花楽庵 店主
梶谷弘(かじたに ひろし)さん(68歳)
定年後をどう生きるか!
2006年、団塊の世代、ベビーブーマーと呼ばれる人たちの定年退職が始まる。
その数は向こう3年で約800万人。
定年後の第二の人生をどう生きるかは、シニア世代にとっても社会的にも大きな問題かもしれない。
そこで、シニアライフにヒントを与えてくれそうな、山陰の元気印人にスポットを当てて見た。
(取材・文章 伊藤 晴之)
趣味を活かした生き方
骨董品の店:骨董 花楽庵
梶谷弘さん(68歳)は4年前、25年勤めた高等技術校を退職した。
梶谷さんが考えた退職後の生き方は骨董品の店を持つことだった。
若い頃から趣味で古銭や切手、掛け軸、絵画、陶器などを収集していたので種類と品数は揃っていた。
知識についても書物だけでなく、技術校で指導に当たっている時から学校が休日になると、日本各地の博物館や美術館を見て廻り、その博識ぶりは地元の業者はもとより、歴史や文化財の研究家、収集家からも一目置かれるまでになっていた。
開店までの経緯
お客さんとの楽しい語らい
店舗は自宅。ITで市場を拡げる
骨董品収集を始めた時から、いつかは店を持とうと考えておられたそうであるが、退職してすぐに店を持った訳ではなかった。
退職後、梶谷さんは県などが行なうIT講習会に積極的に参加して、パソコンの技術を身に着けることに専念した。インターネットを使ってのビジネスを考えたからである。
「ただ店舗を構えるだけでは商圏は限られる。パソコンを使えば日本中にお客ができる。」そう考えたからだった。
悪戦苦闘の甲斐があって技術を修得。インターネットオークションデビューも果たした。
奥さんの了承を得て(事後承諾という噂もあるが)自宅を改装して2005年6月、平田町の宇美神社の西隣りに20㎡の売り場をもつ店舗「花楽庵」のオープンに漕ぎ着けた。
儲けは度外視。交流が楽しい
自宅を店舗にしたことで、家賃が要らないこともあって、商品を売る為にお客さんに無理強いをしたりはしない。そんなところが気に入られて茶飲み話に来る人も多い。お茶を飲みながら好きな骨董品に囲まれての話は、お客にも梶谷さんにとって至福の時間だ。
梶谷さんの収集品には旧本陣記念館に展示されたものもある。
それは自分の鑑定への高い評価と誇りに感じているが、今はそれらを通じてたくさんの人と話ができたり、新たな知識を得られたりする方が楽しい。
毎月開かれる骨董の市(旧平田市で毎月8日に行なわれている。)にも出かけて、新たな出会いと交流を楽しんでいる。
骨董品選びのコツ
梶谷さんのコレクション・其の1
勿論売ってくれます。
まず買ってみる
そんな梶谷さんに、失敗しない骨董品選びを聞いてみた。骨董品を購入する場合、初心者にはそれがどれ位の価値があるものか、本物か贋物かの判断が難しい事への不安がる。
返ってきた答えは「失敗して学ぶ。」であった。
「でも失敗(損失)は最小限に止めなくてはいけません。」その為にはしっかりとした知識を身につけよとのことである。
買う時の注意点も聞いてみた。
「骨董に詳しい人に同行してもらうこと。骨董屋の言うことを鵜呑みにしない。」ことだそうだ。
極意は「まず一点買ってみる。」
その商品を基準にして、次の品を選んで行けば失敗は少ないそうである。
地域活動に参加する喜び
梶谷さんのコレクション・其の2
「梶谷さんには一つ気に掛かることががあった。
旧平田市の商店街は、合併後ちょっと元気がなくなった店が多い。店に元気がなくなると、町も元気がなくなってくる。
「あの賑わいのある町を蘇らせたい。」そんな思いも込めてのオープンだった。
昨年の木綿街道のイベントが行なわれる前の日に、木綿街道のメンバーの幸野屋さんが「木綿街道」と書かれた暖簾を持ってきてくれた。
梶谷さんの「うちも木綿街道の一員。地域の活性化に協力したい。」という思いが通じたのだ。
話を伺っているといつの間にか驚くほど時間が経っていた。
こんなシニアライフも楽しいなと思わせてくれるライフスタイルである。
桜の花が咲く頃には、木綿街道にも賑わいが戻ってくる。木綿街道に行ったらぜひ「花楽庵」を覗いて見て欲しい。
暖簾の向こうには梶谷さんのやさしい笑顔と楽しい話が待っている。
骨董品の店:骨董 花楽庵
住所 島根県出雲市平田町686-3(宮西町)
一畑電鉄雲州平田駅より徒歩7分 宇美神社西隣り
電話 0853-62-3159
代表者 梶谷 弘
メール karakuan@hit-5.netホームページ 作成中(平成18年3月取材)